第一回印象派展の開催から150年、デザイン・クリエイティブセンター神戸¨KIITO¨で開催されている没入型展覧会「モネ&フレンズ・アライブ」を訪れました。絵画がただ展示されるのではなく、最新のイマーシブ技術によって、光、色、音、香りが絡み合う空間が生み出されていました。私は自分なりに建築を学び、空間が人に与える影響を常に意識していますが、この展覧会はまさに印象派の世界に包み込まれるような感覚で空間に与える芸術の魅力を味わうことができました。
印象派が生まれた19世紀後半は、社会的にも政治的にも混とんとした時代でした。都市が発展し、産業が急速に進む中で、芸術家たちは伝統的な表現に縛られず、移ろいゆく光や色の一瞬の美しさを捉えようとしました。クロード・モネは「他の画家たちは、橋や家や舟を描けば、それで終わりだ。私が描きたいのは、橋や家や舟を包み込む大気であり、それらが存在している空間の美しさだ・・・」と語っていました。この言葉から、彼の作品は単なる風景画ではなく、光と大気の揺らぎそのものを描き出しているように感じることできました。本展では、モネの代表作《睡蓮》や《印象・日の出》の筆致が巨大なスクリーンに映し出され、クラシック音楽とともに包み込まれます。
特に印象的だったのは、カミーユ・ピサロやピエール=オーギュスト・ルノワール、ポール・セザンヌ、エドガー・ドガらの作品が次々と映し出される場面でした。彼らの筆遣いの大胆さが、動的な映像と相まって一層際立っていました。
建築においても、光や空間の捉え方は重要な要素ですが、印象派の画家たちはそれをキャンバスの上で見事に表現していました。本展は、そのエッセンスを現代の技術で拡張し、新たな芸術体験へと昇華させていました。モネが追い求めた「空気のような美しさ」に触れたことで、私自身の建築への視点も変わったように感じます。印象派の世界を五感で味わい、その穏やかな力強さと美しさに心を奪われたひとときでした。