江戸の浮世絵師・歌川国芳の世界を堪能できる「歌川国芳展」を数日前に訪れました。歌川国芳といえば、ダイナミックな武者絵の名手であり、同時にユーモアと風刺に富んだ戯画でも知られており、今回の展覧会では、その両面が存分に味わえました。
まず圧倒されたのは、三枚続きの大画面に活かした動的な武者絵の迫力でした。武士たちの佇まいが生き生きと描かれており、今にも動き出しそうなほどで、時代を超えて当時の世界観に引き込まれました。さらに、今回の展覧会で目にした登場人物の表現には、現代の漫画やアニメにも通じるキャラクター表現の源流を感じました。彼の描く英雄たちは単なる武力の強さだけでなく、気概や生き様の魅力をもって迫ってくるようでした。
一方で、国芳の戯画は江戸の庶民文化と知的遊び心に満ちており、猫や金魚を擬人化したり、道具を組み合わせて別のものに見立てたりする工夫は、見る者を思わず笑顔にさせます。幕府の規制によって役者や遊女を描けなくなったとき、逆境に屈せず、ユーモアの力で道を切り開いた彼の姿勢は、現代を生きる私たちにも響くものがあると思います。
そして歌川国芳は無類の猫好きだったようで、今回の展覧会の目玉の一つである新発見の《流行猫の変化》にもその愛情が表れているように、彼が描く猫たちには独特な魅力があり、まるで人間のようなしぐさや表情を見せ、単なる戯画を超えた温かみが感じられました。
その他の動物画にも、生き物への深い観察眼が光っていました。
武者絵の迫力、戯画のユーモア、そして躍動感あふれる動物画まで、歌川国芳の多彩な魅力が詰まった素晴らしい展覧会でした。彼の作品は今なお色あせることなく、見る者を魅了し続けているように思います。