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- エルパス ルイ・ヴィトン大阪で行われているドイツ人アーティスト ウラ・フォン・ブランデンブルクによる個展「Chorsingspiel」へ訪れて
住宅分譲や住宅設計の仕事に携わる上で、「人の暮らしが生まれる空間をつくる」という感覚を常に大事にしています。
そんな中で出会った今回の展覧会、ウラ・フォン・ブランデンブルクの「Chorsingspiel」は、
自分の中の“空間を見る目”に新たな感覚を覚える体験となりました。
会場では2つのビデオインスタレーションが展示されていましたが、特に「Singspiel」は、個人的に非常に印象に残りました。
この作品の撮影が行われたのは、ル・コルビュジエが設計した建物であるサヴォア邸でした。
映像が白黒だったこともあり、はじめはサヴォア邸とは気づかずデジャブを見ているような感覚にとらわれ、
あるシーンでサヴォア邸だと気づいた時、約19年前にその建物を訪れたときの記憶が一気に蘇りました。
コルビュジエが設計した空間は、機能性と芸術性の両立を追求しながらも、どこか人間的な温もりを持っているように思います。
光の取り入れ方、素材の選び方、開口部のリズム、すべてが計算されていて、心地よく感じる不思議な場所。
あのとき感じた静謐な高揚感が、「Singspiel」の映像からもまた違った形で伝わってきて、素晴らしい感覚に浸ることができました。
ウラ・フォン・ブランデンブルクの作品は、
色と質感にあふれる布や、演劇的な動作、詩的な語りを通して、建築と人間の関係、時間の流れ、
集団と個人の在り方を問いかけるように構成されているそうです。
また彼女の作品世界は、まるで舞台のように空間を再構成し、観る側にも「登場人物」としての役割を与えているということでした。
ブランデンブルクの作品には、「総合芸術」の思想が色濃く感じられます。
素材、色、動き、時間、音、そして空間。すべてが一体となって、人の感情や記憶に触れる瞬間をつくり出している。
分譲住宅のように、日常に深く根差した建築だからこそ、
そこにもまた“感じる力”を忘れずにいたい——そんなことを改めて思いました。
建築好きの方はもちろん、演劇や映像に興味がある方にも、この展覧会は強くおすすめできます。
きっと、空間というものの見え方が、少し変わってくるはずです。