先日、春の京都で開催されている「モネ 睡蓮のとき」展に行ってきました。住宅の仕事に携わっている身として、空間や光のあり方にはいつも関心があるのですが、今回の展覧会はまさにその「光」と「空間」を深く体感できるものでした。
展覧会の主役は、印象派を代表する画家クロード・モネ。中でも彼が晩年に繰り返し描いた「睡蓮」の大作が数多く展示されていて、2メートルを超える巨大な作品も展示されていました。美術館の壁一面に広がるそのスケールに、まるで絵の中に入り込んだかのような感覚になりました。
モネの描いた睡蓮は、ただの風景ではなく、彼自身が晩年を過ごしたジヴェルニーの庭の池を舞台にした“心の風景”でもあるそうです。あわせて説明文には、愛する家族との別れや病、戦争など、多くの困難を乗り越えながら、彼はこの静かな水面と向き合い続けたとありました。その背景を知ったうえで作品を眺めると、静かでやさしい絵の中に、強い意志と深い感情が感じられたように思います。
そして、この展覧会をさらに特別なものにしていたのが、会場となっている「京セラ美術館」の建築です。昭和初期に建てられた歴史ある建物を、建築家の青木淳・西澤徹夫設計共同体がリニューアル。昔の面影をしっかり残しながらも、地下に広がる新しいエントランスや、自然光がふんだんに入る空間設計がとても美しく、訪れた人を自然にアートの世界へと導いてくれます。
建築って、やっぱり「人がどう感じるか」を一番大切にすべきだな、と改めて感じました。住宅づくりにおいても、住む人が心地よく、時間とともにその空間に愛着を持てるかどうかがとても大事です。今回のモネ展で感じた“光と空間のやさしさ”は、私たちの家づくりにも通じるものがあると実感しました。
アートに詳しくなくても、心をふっとほどいてくれる展覧会でした。
春の京都、美しい建築とともに、モネの世界に浸る事ができました。