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伊賀の歴史に錨を下ろす――「泊船」で体験した坂倉準三建築

住宅分譲という「住まい」をつくる仕事に携わる者として、以前から訪れたいと願っていた場所がありました。かつて日本モダニズム建築の先駆者・坂倉準三が手がけた旧上野市庁舎が、今、「旧上野市庁舎 SAKAKURA BASE」という複合施設へと見事に生まれ変わっています。その核となるホテル「泊船」に身を置き、伊賀のまちと建築が紡いできた時間を五感で味わってきました。

風が通り抜ける、街の「縁側」のような建築

伊賀上野城の城下町という歴史ある景観のなかで、この建物は優しく街に溶け込んでいます。

特に心を打たれたのは、コルビュジエ直伝の「ピロティ」がもたらす開放感です。柱に支えられた2階の下に、屋外とも屋内ともつかない自由な空間が広がっており、それはまるで街に開かれた大きな縁側のようで、城山からの風が、建物を通り抜けて町へと流れていくように感じました。

 

素材の「微細な差異」が語りかける美学

建築好きとして最も痺れたのは、そのテクスチャーへのこだわりです。

コンクリートの温もり: 柱や梁には杉板の型枠による木目が刻まれ、無機質なはずの素材にまるで木のような質感が宿っています。

職人の手仕事: エントランスで見られる「ビシャン叩き」の壁面は、光の加減で豊かな陰影を生み出し、工業化を背景としたモダニズムの中に日本的な繊細さが息づいていました。

ホテル「泊船」の客室では、今回、ホテルとしての息吹を吹き込んだMARUArchitecture の現代の設計もまた、坂倉準三氏への敬意に満ちていました。客室の壁に重ねられた、艶のある塗装や柔らかな左官仕上げ、そしてタモ材の質感。これらは建物の骨格をいじるのではなく、しなやかな「肉」を重ねるように加えられたものだといいます。「時代に合わせて役割を更新していくことで、建物は長く愛される」。その考え方は、家を建てて終わりとするのではなく、住み継がれる街をつくろうとする私にとって、大切な「コンパス」を授けてくれたような気がします。

「公」と「民」を繋ぐ新たなストーリー

かつての行政庁舎が、図書館とホテルという対極的な機能を持つ複合施設として再生された経緯にも深く感銘を受けました。広いスペースを持て余すのではなく、文化を継承する「図書館」と、滞在を通じてその価値を体感する「ホテル」を融合させたアイデアは、公民連携の理想形であるように思いました。

 

「建物を残していくためには、人が関わり続けることが不可欠」という船谷氏の言葉は、スクラップ&ビルドが繰り返される不動産業界に身を置く私にとって、重く、そして希望に満ちた響きを持って届きました。

伊賀という土地に息づく歴史や文化を、建築というコンパスを頼りに巡るひととき。ただ泊まるだけではない、時代を超えた坂倉準三との対話は、これからの私の仕事における「住まいづくり」の視点を大きく広げてくれる貴重な体験となりました。